鶴づれ

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きらめき


 ある日、突然体が軽くなった。
 今までずうっと暗い海の底に沈んだように、なにもかも重くてどうしようもなかったのに。今はこんなに軽やか。
 なんでだろう?ううん、なんでもいいや。
 動けるのって、幸せだもん。
 そうだ。せっかく軽くなったんだから、君のところへ行こう。初恋の君。もうずいぶん会ってない気がするよ。
 ふわりと体を浮かせて、君の家へひとっ飛び。
 住宅街の端っこに、変わらず君の家はあった。
 お空が赤い。夕方だね。もう帰ってるかな?
 …あっ!いた!高校生みたいな服を着て、大きなリュックを背負って、女の子と一緒に歩いてる。すごくお兄さんになってるけど、君だよね?顔はそのまんま。
 …あと、その子はだぁれ?新しいお友達?紹介してほしいな。
(おーい!久しぶりっ!)
 大きく手を振って、君に向かって叫ぶ。
 でも君は、女の子と話をやめてくれる気配はない。
(おーいっ!)
 私の方には見向きもせず、女の子とこっちへ歩いてくる。どうして無視するの?
 君はとうとう目も合わせず私の真ん前まで来て…。私を通り抜けてまた歩いていってしまった。まるで、私がそこにいないみたいに。
 …いや、もうわかっちゃった。私、幽霊になっちゃったんだ。だから、君には見えなくなったんだね。
 そして、私がいなくても楽しそうにしてるんだね。
 振り返ると、君は女の子に笑いかけて、家に入っていった。
 その笑顔、すごくきらきらしてるね。私には眩しいよ。
 私の瞳からも、きらきらしたものが一つ、二つと落ちてくよ。これ、なんだろうね…。

9/5/2023, 3:19:08 AM