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【忘れたくても忘れられない】

そのひ、変なぼうしを被ったマジシャンは、「すてきな君に一生忘れられない、ティーパーティーを」と言った。
そらからぱらぱらと落ちてくる飴玉と、大きな大木にあいた丸い穴。

「さぁこっちだよ。」

てを引かれるまま、穴にまっさかさま。

不思議な仲間と、からくりじかけの友達。なんだか僕もたのしくなってきて、彼らと笑いあった。

にがい紅茶を飲み干したところで、マジシャンはじゃあねといって…

「おはよう、楽しい夢でもみてた?」

そこは陽も沈みかけの教室だった。
なんだ、夢か。

「すごい楽しそうな顔してたよ。」
目の前で笑う彼女に僕もつられて笑う。
名もしらない彼女に、僕はマジシャンのことをいつの間にか話していた。

それが10年前の話なわけだけど。
「懐かしいね。」なんて横で笑う彼女と、それを興味深そうに聞いていた娘に、僕も応える。

「でも、きっとあの日のことは忘れたくても一生忘れられないだろうね。」

10/17/2024, 11:16:18 AM