「あ、宇宙人が逃げた!」
夏の日差しの中、一つの裏路地へ走る。
からかうように奥へ奥へ入る猫を追う私。
細い目に細い体、自由気ままに動く猫が幼い私にはどこか宇宙人を彷彿とさせた。宇宙人が大好きだった。
翌日、梅雨が明けているはずなのに大雨。
窓に水が打ち付ける音がよく響く。
野良猫の宇宙人は雨を凌げているのかと、傘を差し外に出た。
少し歩いた道路脇に生き物のようななにかが横たわっていた。宇宙人だ。まるで雑巾のように濡れ汚れていた。血は出ていないものの節々が折れ曲がっていた。
突然のお別れ。想像もしていなかった。
宇宙人が宇宙人じゃないみたい。気づかないところで消えた命。目から涙が落ちた。
灰色のヴェールを纏ったような空、その中に一つキラメキがあった。あれは、飛行機だろうか。いや宇宙人の乗り物に違いない。次はもっと幸せになってね。
出会ってくれてありがとう。
夏の雨の日は、今でも空を見上げ探してしまうんだ。
7/17/2024, 6:27:26 PM