望月

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《まって》

 太陽が沈んで、月が昇ってきた。
 初めて会ったあの日に交わした言葉を、昨日のことのように覚えている。
 うつらうつらと思考が浮かんでは消えて、暗闇が少し明るくなって。暗くなって。明るくなった。
 それで、声がいなくなった。
 また暗くなって、明るくなって、暗くなった。
 それで、顔が思い出せなくなった。
 また明るくなって、暗くなって、明るくなって、暗くなった。
 それで、君の温もりを忘れてしまった。
 嗚呼、どうして。
 どれだけの時が過ぎたのか。
 君が生きていたという事実だけを覚えている。
 君がどんな人だったのか。
 君とどこへ行ったのか。
 君はどう笑ったのか。
 君に何を話したのか。
 もう、何も思い出せない。
 時間は待ってくれないのだと、誰が教えてくれたのだったか。
 多分君だ、君のはずなのに。
 もう、思い出せない。
 君をどう思っていたのか——君をどう思っているのか、それだけが遺されたものだ。

5/19/2025, 9:34:06 AM