ジーキャー

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 押し入れの小部屋の片隅では、フローラの匂いが満ちている。
 それは隠れ家。狭く暗い所が落ち着く。入った者の心情である。
 そこには時計はあるが針は止まっている。電池切れであるゆえに。交換する予定は無い。ただのインテリアとなっている。
 人が独り入るだけで精一杯の小部屋。そこで紡がれるのは、部屋の片隅でをテーマにした物、
 息を吸い、息を吐く。ただの呼吸。けれども、思考を切り替えるにはちょうど良い。
 ランタンの明かり。それが小部屋を照らし出す。片隅に置かれたランタンは影を作り出す。
 飾られた造花の蔦はラティスに絡みついて、緑の色彩を与えている。
 ペンを走らせ、物語を紡ぎ出す。それはどんな物語なのか。
 それは誰にも分からない。筆者でさえ考えていない。
 ただ思うがままにペンを走らせゆく。物語の息吹に導かれるようにして。
 秒針を刻まない時計は何を思っているのだろうか。
 造花の蔦や花たちは何を思っているのだろうか。
 ただ、小部屋の片隅では、ペンを走らせる音だけが鳴り響くのみーー。

 ーー隠れ家小部屋にはどんな物語が眠っているのか。
それは誰にも分からない。ただ、紡がれる時を待つしか無いのだからーー。

12/7/2024, 12:19:55 PM