小林 薫子

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JR舞浜駅は楽園がもれ出ている。

 「あ、充電器忘れた!ねぇ、薫、充電器持ってる?」
 顔と同じくらい大きい耳をつけた美希がぐっと近づいて私のかばんをのぞきこんできた。
 
「も……持ってる、持ってるよ!近いし、声でかいし、しゃべるの早い」

「だってさあ、充電器なかったら最悪じゃん?もう今の時点で60パー」

「近いって!めっちゃテンション高いじゃん。あんたの鼻にプラグ差したら充電できそう」

「何、クールな振りしてるのよ!あなただって内心踊ってるくせに」

 確かに美希の言うとおりだった。私だけではない。
 赤い車両、黄色い声、軽い足元、
 入りきらなかった楽園が、入り口を超えて駅までにじみ出ていた。

 風船を持った美希と私の影は耳が全部で六個ある。

「やあ、ボク美っ希ー。よろしくね」
「はいはい、わかった」

 さあ、行こう楽園へ―

 
 
 

5/1/2026, 2:41:08 AM