ゆきやなぎ

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#50【かぶりもの】

入社以来ずっとかぶり続けている「ネコ」
たまには外してもいいんじゃない?
ふと思い立ち今朝は素の自分で出勤した。

何もかぶらずに出かけた朝の
空がこんなに青くて広いものだったなんて
感動だ。

「ネコ」をかぶらない私は「トラ」だ。
イラっとしてガルルッと少し唸ったり
爪でガリッと机に痕をつけてしまったが
仕事の出来は最速で最高だった。

さすがトラ!

ところが、
「今日はどうした?具合でも悪いの?」と
ご親切にも、いつもと様子の違う私を心配した上司に声をかけられた。

「いえ…。申し訳ありません。
実は、今朝、「ネコ」をかぶるのを忘れてきてしまいまして...」

「あぁ そうだったのか!
じゃぁ明日からは忘れないように気を付けてね」

頼もしくて部下思い
有能な仕事ぶりの
いわゆるデキる上司は
どうやら私にはネコをかぶっていてほしいらしい...

優しく私をたしなめていってしまった。

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彼がかぶっているのは「ライオン」
リーダーにふさわしいかぶりものだ。

でも、私は知っている。
その「ライオン」の下にはか弱い「シロウサギ」が潜んでいることを。

以前、ライオン上司と同期だという
「キツネ」のお局さまが言いふらしていたのだ。
彼女は彼の出世をずっと妬んでいるわけだが
実は、若い頃、ちょっとした恋愛事情が二人の間にはあって…というのが確かめようのないみんなが知ってるうわさなのだ。

そして、私は見てしまった。
人気のないロッカー室で、
彼女の「キツネ」の下は「オオカミ」だということを....。

いくら若かったとはいえ
「オオカミ」と「シロウサギ」の恋愛となると
さぞや相容れないことがあったであろう...と双方を思いやりつつ、

「オオカミ」に先に獲物を獲られなくてよかったと心から思っている。

お題「たまには」

3/6/2023, 7:42:20 AM