雪国の朝は放射冷却で白く曇った街並みから始まる。
全方位どこを見ても白く積もった雪を横目に、
せっせこと道を作る。
家の中では太り気味の猫が呑気に寝ている。
親友が行方をくらまして、2回目の冬が来た。
形見とも言える親友につれ歩いていた猫は、すっかり冬毛と運動不足で太り気味になってしまった。
いつも眺めている写真も、既に褪せ始めている。
こんなもんか、と雪をどかして家に入る。
全身に雪がちらちらと引っ付いている様子は、さながら粉砂糖でもかかった菓子類である。
雪国特有の二十扉を開いた時、呑気に寝ていたはずの猫がするりと勢いよく家から飛び出した。
外は雪かきをしたとはいえ積もってはいるし、何より凍っている。そんな中に猫を放り出してしまえば、命の危険さえあるだろう。
俺は慌てて猫を追いかけた。雪かきをしたばかりだと言うのに、既に積もりはじめた雪に付いた小さい足跡を必死に追う。しばらく歩くと、そこに一人分の誰かの足跡が重なっていた。
期待。
あの猫がここまで必死になるなんて、あいつしかいない。
心のどこかで親友のことを待ち焦がれていた自分にとって、かつてないほどの高揚だった。
さっきよりも急いで追う。手袋を既に外した状態だったためか、手の先が赤くじんじんと痛んでいる。
……ちらちらと薄い雪が降る中、前を見た。
雪に似つかわしくない真っ赤なジャケットを着たかつての姿そのままの親友が、そこにいた。
足元には、草に着いた霜が朝日に照らされイルミネーションの如く光っている。
親友は髪や服に付いた雪なんて溶けてしまいそうなほど、暖かい笑顔で言った。
「ただいま。」
《霜降る朝》
11/28/2025, 1:27:59 PM