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信号


木漏れ日の光を一つ一つ拾い集めるように歩く。
落ち葉は全部踏み潰して歩く。踏み潰す音はサクサクと軽やかで全然痛そうじゃない。
アスファルトのひび割れを避けながら歩く。ひび割れが突然裂けて落ちたらどこに行くんだろう。

下校中、私はいつもそうして時間をかけて歩く。
あの信号機のところまで。あの信号機は、赤が長いから。赤信号が、前を歩くあの子達と私を遠ざけてくれるようにと。
あざ笑う声の中に聞こえてきたのは私の名前だった。時折振り返って突きつけられた冷たい視線が私を俯かせた。私はそれが全部分からなくなるまで、ゆっくりと歩く。あの信号機の赤は長い。
どうか、あの子達と赤信号で一緒に止まることがありませんように。




9/5/2025, 10:19:13 PM