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バカみたい




あーあ、ほんっとバカだなぁ。


いつもいつもニコニコしちゃって利用されてんのもわかってないの!
聖書を読むフリをしてこちらに向かってニコニコと手を振る両親に気が付かないフリをする。

本当に呆れる程に滑稽な話だと思う。
善良と書いてばかと読むのではないだろうか。
薄寒い程にお綺麗な教義を前に、一心不乱に信じ込む世界は、常に現実と向き合う事から逃げる事で成立する。

ほんっとバカなんじゃないかな。
顔を上げれば似たような表情の信者たちと
似たような姿で似たように盲目的に信仰をする人達の中に、私の親は埋もれていた。

目に見える世界は虚構ばかりだ。
あぁやって両親に笑みを浮かべて近寄っていく人間たちの何人が信用出来るというのか。
困った時はお互い様だから、そういって笑いながら差し出したお金が、戻ってきた事が何回あるというの。

美しい世界がないからこそ、虚構の美しさは輝く。そんな事がわからないのに、何を美しい世界だと言えるんだろう。

『アニスちゃん』
思っていたよりもずっと近くから母の声が聞こえた。顔を上げれば心配そうな声がする。

『大丈夫?元気がないみたい。』
そう心配する母の表情に嘘はない。
誰よりそばに居る自分だからこそわかる。
そこに救いのなさを思い知る。

『なんでもないよママ。少し疲れたみたい』
取り繕うように浮かべた笑顔に母はニコリと笑った。
『そう、アニスちゃんは頑張り屋さんだからきっと頑張ればもっと上のグループに入れるわ。ママはアニスちゃんの事なんでも知っているもの。』

笑顔の母に同じ様な仮面で笑い返す。
足早に去っていく母の後ろ姿を表情を変える事も出来ずに見送った。
無性に何かに耐えられない気持ちを笑顔に隠す自分はどんなふうに映るのだろう。

あーあ、本当に本当にバカだなぁ…

誰に聞かせるわけでもない小さな諦めは
誰に向けたものなのか、
自分自身でもわからなかった。

3/23/2026, 3:33:41 AM