『手を繋いで』
ホールに流れ出したワルツの曲調。差し出された大きくてかさかさの手に自分のしわしわの手をそっと重ねる。彼と初めて踊ったのはもう何十年も昔のこと。足を踏んだり他の人とぶつかったりしていたこともしょっちゅうだった少年少女が今ではステップを淀み無く軽やかに踏める。美しい姿勢を保つために視線を交わさないままで、昔話をひとことふたこと話しては笑い合う。
「あなたと踊るのはいつも楽しいわ」
「僕だって同じぐらい楽しいよ」
ワルツにまだ終わりは訪れない。それまでは手離すことの名残惜しさを考えなくてもいいだろう。
12/10/2023, 4:17:18 AM