脳裏に灯るキャンドルライト。
いつまでも燃え続けていたら燃料がもったいないから、ふいと息で吹き消した。
オレンジ色の火の光は、世界のどこにもいなくなった。
あるのは、不機嫌そうな灰色の煙。
脳内物質のなかで漂っていた。
いつの間に、こんなに充満していたというのか。
脳のどこかにあるというWindowに手をかけて、換気をしようと試みる。
ただ、その窓ガラスは透明感とは真反対にある属性をしていて、クレセント錠は固まったように動かない。
力をいくらかけても微動として動こうとしない。
長年の不登校児が引きこもりになって、草むしりをするような姿勢……。
そうか。そうだったんだ、と気づいた。
気づいた途端、諦めたくないと思えた。
ここに、ホコリと黒い黴が棲んでいるのだ。
この錠は、まだまだ硬くなる。その前に……。
何かを噛ませて、力を込めた。
テコの原理、テコの原理……
キリキリと少しずつ隙間を砕いてカタツムリは進んでいく。
もうちょっとだ、頑張れ。
窓の外は雨模様。
いつまでも降る、明けの知らない梅雨。
クレセント錠は半回転してエクセレント。
窓を開けることができた。
そうしたら、脳内に立ち込める嫌な煙は、さっと逃げていく。
換気される空気の流れを眺めていて、ハッとする。
脳裏に灯るキャンドルライト。
チャッカマンはどこに仕舞ったかな?
今度は自分で見つけなきゃ。
11/10/2024, 9:40:19 AM