22時17分

Open App

脳裏に灯るキャンドルライト。
いつまでも燃え続けていたら燃料がもったいないから、ふいと息で吹き消した。

オレンジ色の火の光は、世界のどこにもいなくなった。
あるのは、不機嫌そうな灰色の煙。
脳内物質のなかで漂っていた。
いつの間に、こんなに充満していたというのか。

脳のどこかにあるというWindowに手をかけて、換気をしようと試みる。
ただ、その窓ガラスは透明感とは真反対にある属性をしていて、クレセント錠は固まったように動かない。
力をいくらかけても微動として動こうとしない。
長年の不登校児が引きこもりになって、草むしりをするような姿勢……。

そうか。そうだったんだ、と気づいた。
気づいた途端、諦めたくないと思えた。
ここに、ホコリと黒い黴が棲んでいるのだ。
この錠は、まだまだ硬くなる。その前に……。
何かを噛ませて、力を込めた。
テコの原理、テコの原理……
キリキリと少しずつ隙間を砕いてカタツムリは進んでいく。
もうちょっとだ、頑張れ。
窓の外は雨模様。
いつまでも降る、明けの知らない梅雨。

クレセント錠は半回転してエクセレント。
窓を開けることができた。
そうしたら、脳内に立ち込める嫌な煙は、さっと逃げていく。
換気される空気の流れを眺めていて、ハッとする。
脳裏に灯るキャンドルライト。
チャッカマンはどこに仕舞ったかな?

今度は自分で見つけなきゃ。

11/10/2024, 9:40:19 AM