わをん

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『閉ざされた日記』

人の気配の無い街に人の生活の名残だけがある。金目のものはあらかた漁り尽くされて、割れた食器やこどもの玩具、もういない人たちの写真などが土に還るのを待っている。砂埃の混じる風が可愛らしい表紙の冊子を捲っていく。拙い文章で書かれた日記はある日を境に文字が埋められることはなくなった。風がいたずらに吹き乱したあとの日記をもう誰も読むことはない。

1/19/2024, 2:56:48 AM