悪役令嬢

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『刹那』

これはとある貴族の男の話
彼はギャンブルが好きな酒浸りの浪費家で、仲間と連んでは下の立場の相手を使い鬱憤を晴らす性根の腐った奴だった。

ある日の事、男は酒場で好みの女に強い酒を
勧めて酔わせた後、そのまま宿に持ち帰った。
暫くすると女は泡を吹いて動かなくなった。

はー、めんどくせえ。
また親父に頼んで処理しておくか。

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気が付くと見知らぬ場所にいた。
どこだここ?
口枷と漏斗がはめ込まれた状態で
テーブルの上に縛り付けられた男。
辺りを見回すと、仲間たちと酒場で出会った
あの女がこちらをじっと見下ろしている。
女が手に持った酒瓶を男の口に突っ込むと
勢いよく酒が喉へ流れ込んできた。
ごぼぼぼぼぼっ!苦しい!

「飲んで飲んでー!」
「いっき!いっき!」
周りの連中が手拍子しながら囃し立てる。

ふざけんな!誰かこいつをとめろ!

パンパンになった腹を殴られ、
胃に溜まったものを噴水のように吐き出した。

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場面は移り変わり、
男は檻の中で鎖に繋がれ吊るされていた。

扉が開くと奥から鼻息荒く口から涎を垂らした
豚が飛び出してきた。

ぷぎぃぃぃぃぃぃ!!

腹を空かせた豚たちは男の存在に気が付くと、
一目散に駆け寄ってきて男のスネに齧りつく。
いぎぃぃぃぃい痛い痛い痛い痛い!
足が、俺の足があああああ!!!

「お前さんのような輩は生きているだけで
害悪じゃ。このまま豚の餌になってもらおう」

檻の外で誰かがこちらを覗いている。
そうだ、こいつは、橋の下で仲間と
嬲り殺しにしたあの老いぼれ…

嫌だっ!こんなところで生きたまま豚に
食い殺されるなんて、お願いだ、助けてくれ!頼む!

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目を覚ますと男はベッドの上に横たわっていた。
死んでない。今までのは全て夢だったのか?
安堵する男の傍らで、
闇のように黒い鎧と黒いローブを着た
二人組の男が何か話している。

「薬の効果は如何程だ」
「順調です」

Hyperbolic Time Chamber
この薬を摂取した者は、幻覚を見るようになり
薬を摂取してない者と時間の進み方が違う。

我々にとっては一瞬の出来事でも、
被験者にとっては永遠の時間のように思える。

「けれどまだ試作の段階です。
この者には暫く付き合ってもらわねば」

4/28/2024, 11:45:28 PM