華音

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開けないLINE

「好きです。付き合ってください。」
君がいつしか言っていた。告白されるなら文面がいい。
僕は君のことがずっと好きだった。優しい声色。笑うと子供っぽくなるところも。いつも優しいところ。
そんな数え切れない程の想いを文に乗せて、送信のボタンを押す。
すぐには既読が付かないから、返信が来るまでの時間が、永遠に感じた。
何分?いや何時間?経って、着信音が来た。
僕は読み上げられた手札をとる如く、スマホを開いた。
案の定。君からのLINEだ。
急いでスマホにパスワードを入れるーーが、途中でピタりと手が止まってしまった。
もし、自分が望む結果じゃなかったら、立ち直ることができるのか。僕はもう何年も彼女に好意を寄せている。そんな積み重なった思いが、この一瞬で崩れ去る恐怖。
そんなことを感じていた。
しかし、きっとここで見なければ、結果は分からないし、それに彼女も勇気を出して返信してくれたはずだ。すー、と深呼吸をして目を軽く閉じる。気持ちを落ち着かせると、僕はパスワードをもう一度入れ直した。最後の決定ボタンヲタ押す手が、すごく震えていた。
すると、僕は目を疑うようなものを見た。
なんと、返信が削除されているのだ。
どうしよう。やっぱり僕から告白されるのは嫌だったか。いや、誤字をしただけで、もう一回来る。そんな思考がぐるぐると頭を占める。
さあっと、体が冷えていく気がする。
が。
突然、大きな着信音が耳に通る。かけてきた人は……君だった。
僕は震えを抑えること知らず、すぐに電話した。スマホを片手にとる。
すると、電話口から衝撃のことを言われた。
「公園で、待ってる。」
そう恥じらいのある声でそれだけ言って、電話を切られた。
……これは、期待してもいいか?
僕は、確かあの時「告白されるなら面と向かって」だと言った。しかも、今回の電話で「一人で来て」と言われている。
そしてあのトーン。ごめん。捨てられた子猫のような声で言われると、勘違いしてしまいそうだ。
僕は、服を着こなして、胸を張って外へ出た。
いま、こんないい展開を逃す訳には行かない。
これ以上開けない距離。
1歩近づく関係。
小さな一線、ラインの距離が開けない。
僕は、友達という一線を超えた関係になるために、1歩踏み出した。

9/1/2023, 2:58:50 PM