小鳥貴族

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 私にとってこの麦わら帽子は、大切なものなのです。祖母との思い出が詰まっています。幼い頃、私が気まぐれで農業を手伝うとき、祖母はいつも自分の麦わら帽子を私に被せてくれました。そう、この麦わら帽子です。見ての通り、使い古されてボロボロになった麦わら帽子は、幼い私には格好が悪いように思いました。でも、祖母は「やっぱり似合うね」と笑顔で言ってくれるのです。両親は共働きで殆ど家に居らず、祖父は早くに他界したしました。兄弟もいない。私には祖母しかいませんでした。だから、祖母がそうやって笑ってくれると私も嬉しかったのです。格好が悪いなんて思ったことに罪悪感があったくらいです。
 そんな祖母が五年前に亡くなりました。老衰です。最期は住み慣れた自宅で過ごしたいという祖母の希望で終末期は私たち家族と過ごしました。そして穏やかに家族全員に看取られて亡くなりました。祖母の遺品を整理していると、あの麦わら帽子が出てきました。懐かしくて涙を流している私を見て、両親は私が持っているべきだと渡してくれました。
 この麦わら帽子は今でも私の宝物です。この麦わら帽子を見ていると、昔のことが思い浮かぶのです。祖母の嬉しそうな笑顔が、あの私の全てだった日常が思い出されるのです。
いつまで経っても、私の大切な宝物なのです。

                   『麦わら帽子』

8/11/2023, 7:26:09 PM