村の集会所にメルルは呼ばれた。
一部の人は酒盛りを始めていた。
「あの…」
入ったとたんに人達が恐ろしい目付きをしながら、占い師の少女を糾弾し始めた。
「そもそもこの娘の言うことが嘘だったんじゃないか!?」
「そうだ!災いと言うのもこの娘がし仕組んだのではないのか!」
とんでもない濡れ衣だった。だけど…
「この娘の連れている魔物のような男を見たか!どう見ても人間じゃなかった」
それの仲間なんじゃないか。
酒を飲んだあとは本性が出ると言う。だけどこれではあまりにも…
山奥の村は野生に戻りつつある魔物に苦しめられていると聞いた。城で依頼を聞き、メルルはヒムと長い旅の末やってきたのだ。滞在も二週間目。襲撃をピタリと当てると、はじめは感激していた村人も、次第に不審げになっていった。
「黙って聞いてればお前らはよ!」
ヒムが我慢できずに出てきてしまった。当然、村の女達は悲鳴を上げ、子供達は親の後ろに隠れる。泣き出す子もいた。
「ほらみろ!とんでもねぇ目付きだ!おっかねぇ」
「んだとコラ…!!」
「ヒムさん…!」
彼を止めようと、メルルがおどりでる。
そんな彼女を乱暴に抱き寄せると、鋭い目付きで人間達をねめつけた。
「オレ達はなぁ、お前らを助けようと旅をしてきたんだ!わざわざ来るかよこんな所!オレに言えばいいのに、なんで同族のメルルに言うんだよ!!」
オレの好きになった人間はこんな生き物だったのか。
怒りが失望になり、涙に変わった。それがメルルには痛いはど伝わった。
「ヒムさん、言わせてしまってごめんなさい…。私が、私がいけないんです」
「んな訳あるか」
「人は臆病な所もあるんです…」
あなたに、こんな目をさせてしまった。
抱き寄せられたまま、メルルの細い手がヒムの顔を触れ、唇を撫でた。そして頬に流れる涙をぬぐう。
「人の恐怖の増幅を私は知っているのに。私はあなたに頼りきっていたんです」
人を助けたいというわがままをどうか許して。とても優しい人に涙まで流させてしまった。
「お前が望むなら。オレはお前の剣となり、盾となる。言ったろ」
人間を好きになったのは…オレの勝手なのだから。
そっと額同士を合わせる二人に、村人達は立ち入れない空気を感じ押し黙っていた。
10/15/2023, 3:01:05 PM