月見茶

Open App

無色の世界

 姫依は職を失った。
 
 初日、姫依はあらゆる縛りから解放されたことを喜んだ。読めなかった小説を沢山読んだ。世界に没頭した。
 
 二日目、姫依は、久々に朝寝を楽しんだ。次に目が覚めたのは、日が頂点に達していた。
 
 三日目、姫依は、自炊が億劫になり、初めてピザをデリバリーした。大きく分厚い生地にはニンニクとイベリコ豚の香ばしい香り。サイドメニューのポテトはカリカリしていて歯ごたえがよく、ナゲットはしょっぱく感じた。
  
 四日目、昼に目が覚めた姫依は、不意に虚しさを感じた。部屋が何故か雑然として見える。
 今まで感じることのなかった違和感が姫依の中に入ってくる。

 五日目、明け方に姫依はベットの上に座り込んでいる。明かりを着けない部屋は黒一色だ。
 姫依はじっと黒を見ている。

 六日目、姫依はカーテンを開けても、部屋に色がついていないように感じる。何処を見ても白、白、白。
 姫依は何故か空腹を感じなかった。

 七日目に、姫依の瞳孔は開いたままになるところだった。
 姫依は無意識に、机に無造作に置いていたパソコンを開き、起動させた。
 姫依の瞳は右往左往するが、何処までいこうが、白しか認識出来なかった。

 

 八日目、遂に姫依は、赤、青、白の三色を取り戻すこととなった。

4/18/2026, 4:02:09 PM