「なぁ、良い加減降参しろよ」
何回も飽きず隙を見つけてはそういってYESのみの回答を求めてくる同僚のレノ。数日前に告白されたのがもう遠い昔のように感じる。オフィス内ではまたか、のような表情で何事もなかったかのように仕事に戻るツォンさん達。誰か止めて欲しい。
私が返事をせず書類に向かっていると視界に入るように屈んで見上げてくるその姿は外の任務では決して見られない表情だ。
「聞こえてんのか?」
「…聞こえてる」
「俺がお前の事好きなのは?」
「…この前聞いた」
そう何回も言わないで欲しい。
私は自分の心臓の音がバレるんじゃないかと内心、落ち着かない。
「だったら、その返事はいつ貰えるんだ?言った日にはお前、走って逃げただろ」
「そ、れは…」
もう答えが分かってるかのようにニヤけながら詰め寄るレノが腹立たしい。このいつもいつも自分は余裕です、という表情をなんとかして崩してやりたい。私は咄嗟に目に入った彼の手の甲に自分の手を重ねて手首から指先までをゆっくりとなぞった。
「お、ま」
まさかそんな事をされるとは思ってなかったのだろう。
レノの表情に焦りが見えた。
「…好きよ。最初に会ったあの時からずっとレノが好き」
私はそのまま周りにバレない声量で、めいいっぱい甘ったるい声でそう囁いてやった。
-最初から決まってた-
8/7/2024, 2:53:47 PM