猫眠ことり

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 「「いっせーのーせ、あいしてる!!」」
 ふわり、夜風に裾がたなびいて心と身体が踊り出す。重力を振り切って飛び出した僕らの間を天の川が繋ぐ。眼下に広がった街はありきたりに宝石箱のようで、地平線はやっぱり少し丸みを帯びていた。
 かくん、繋いだ手と手が傾いて、忘れていた重力が僕たちを下へと引き寄せる。吹き上げる風が君の白いスカートの裾をめいっぱい広げたのを合図に僕らの体は一直線に奈落へと滑り落ちた。
 「大好きだよ」
 「忘れないで」
 「「今度は、2人で」」
   ―― 一緒に生きようね。

 下へ、下へ、下へ。
 めいっぱいの幸せと1粒の涙を抱えて、光り輝く星を目に焼き付けて、走馬灯よりも君の顔を、鼓動を、声を、全てを離さないように抱きしめて。最後の最期まで振り絞った愛を贈り合って、僕たちは永遠へ目を閉じた。



 ―― 「今入ってきたニュースです。**県**市の山岳から2人の遺体が見つかりました。2人は不可解にも互いに手を繋いだ状態で発見されており、また遺体の状態から高所から落ちたのではないかと推測されています。遺体はどちらも男性のものと見られますが、1人は何故か女装をしていたということです。警察は見身元の確認を急いでおり――


『9.8m/sの告白』

6/18/2024, 12:03:43 PM