ただ、そばにいられたらそれだけで、幸福に満たされた。
好きだなんて言葉は、そう簡単に出てくるものではなく、自分の外に吐き出すものでもなく、内に残してこそが“美しい”のだと、思っていた。
易々と口にするのは“らしくない”のだと信じていた。
それが、自分にとっての当たり前だった。
君を失ってしまうまでは。
陳腐なのは己自身だと気づいたとき、君はもう、この場所にいなかった。
傍にあるのが当然で、それは命ある限り続くものだと、そんなものだと疑うことすら思いつきもしなかった。
失って初めて大切さに気づくなんて、それこそ陳腐な言葉で、自分には相応しいのだと思い知らされる。
こんなものが愛だったと云えるのか。
自己愛といえば、正解かもしれない。
君を愛していたなんて、いまさら、鼻で笑われるだろうか。そんなことをしない人だと知っているから、傍にいてくれたことも、今ならわかる。
声に出せばよかった。口にすればよかった。大切なのだと、愛しているのだと、伝えればよかった。
すべては、何もかも遅いのだけれど。
『愛を叫ぶ。』
5/12/2026, 8:33:44 AM