不整脈

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名前もない風景が
胸の奥で地図のように広がって
私を誘う

行ったこともないのに
そこにずっと、誰かが待っている気がする
声はしないけれど
目を閉じれば、手を伸ばしてくれるような

うまく笑えないとき
まっすぐ歩けないとき
世界がきしんでうるさくて
息が詰まるとき

朝焼けに包まれた坂道とか
子供が落書きした橋の裏とか
誰かが落としたハンカチの匂いのする空とか
そういう、くだらないけど
あたたかい場所を歩いてみたい

なにも証明しなくていい場所
なにも演じなくていい場所
ただの「わたし」でいていい
そんな場所を、遠くで探したい

だから今日も、地図を開けずに
心だけポケットに入れて
そっと、歩き出す

私がわたしに
ただ「よかったね」って
言ってあげられるように

7/3/2025, 11:41:21 AM