G14(3日に一度更新)

Open App

158.『もしも未来を見れるなら』『何もいらない』『雫』


 突然だが、もしも未来が見れるなら、アナタは何が知りたいだろうか……?

 宝くじの番号?
 期末テストの解答?
 それとも、未来の自分が成功しているかどうか?
 人によっては、『HUNTER×HUNTER』の連載が再開しているかどうかが死活問題かもしれない。

 知りたいことは人それぞれだろうが、私にも知りたい事がある。
 そして私が知りたい事は少々特殊だ。
 私が知りたい事、それは……


 ――『今まさに私が描いている漫画の続き』だ!


 『いったい何を言ってるんだ?』という冷ややかな目線は想定内だ。
 けれども私にとっては切実な問題。
 知ることが出来れば『他に何もいらない』と言い切れるほど、重要なことなのだ。

 こう思うのには訳がある。
 実は私、マイナー漫画雑誌に連載を持っているプロの漫画家だ。
 そこそこ人気があり、ありがたいことに五年ほど連載を続けさせてもらっている。

 それなりの長期連載だが、だからこそ問題がある。
 それが『漫画の続きをどうするか?』問題……
 長期連載の宿命か、ネタが枯渇し始めてきた。

 これは漫画家にとって、文字通り死活問題である。
 ネタがないということは、漫画を描けないという事。
 原稿料が貰えず生活は困窮し、空いた枠を他の新人に奪われる。
 漫画業界は、生き馬の目を抜く非情な世界なのだ。

 そうならないためにも、私は漫画を描き続ける必要がある。
 けれど悲しいかな。
 今現在、次の展開が何も思いつかない。

 真っ白なままの原稿を見て、私はふとこう思った。
 『未来の自分が書いた完成原稿を、今の私がパクれたなら……』

 もちろん盗作はご法度。
 それだけで漫画家生命が終わってしまうほど、あってはならない行為である。
 だが、相手が『未来の自分』ならどうだろう?
 誰も困らない、完璧な解決策である。

 もっとも、未来視なんてただの夢物語だ。
 あり得ないからこそ、そんな妄想で、現実逃避するのだが……



 ――そのはずだったのだが、私は偶然、その方法を発見した。
 ネタ探しに祖父の家の倉庫に漁っていた際、その秘法が記された古文書を見つけたのだ。
 なんでも深い山々のそのまた奥に、ひっそりと佇む祠があるらしい。
 そこでお供え物をしてお祈りすれば、未来が見れるという。

 私は歓喜した。
 これで人生最大の悩みが解決する。
 私はその場で小躍りした。

 早速現在の地図と照らし合わすと、なんというご都合主義か、この家の庭にあることが判明した。
 さすが、おじいちゃんの家だ。
 駅から車で二時間の立地は伊達じゃない!

 すぐさま庭に飛び出して、祠の前で膝をつく。
 良さげなお供え物が無かったので、自著の単行本を置いた。
 こういうのは心が大事なのだ。

 そんな言い訳をしていると、脳裏にポワポワとヴィジョンが浮かんできた。
 そのヴィジョンの中で、私は来月号の雑誌をパラパラと捲っている。

(このまま見れば、どこかで私の漫画が出てくるはずだ)
 そう期待して集中する――が、いっこうに自作が出てこない。
 おかしい。
 さらに集中して誌面を追うが、どこにも私の漫画が載っていない。
 やがて、雑誌の最後まで読み切り、一度も私の漫画が出てこないまま映像が終わった。

「……今のはどういうことだ?」
 他の連載陣を見る限り、未来であることは間違いない。
 なのに、私の漫画だけ載ってないのはどういうことだ?

 困惑しながら家に戻ると、担当編集者からスマホにメッセージが届いてた
 嫌な予感がしながらスマホを開く。
 その内容を見て、私の額から一筋の冷や汗が、雫のように流れ落ちた。


「やべ、締め切り忘れてた……」


 P.S.

 この物語はフィクションですが、自分で設定した短編の締め切りをド忘れし、遊び惚けていた阿呆はここにいます。
 そして、自動車免許の更新締め切りを忘れていたのも自分です。

 これを読んでいる皆様におかれましては、阿呆な自分を他山の石とし、締め切りを守るようにしてください。
 でないと、締め切りをぶっちぎった事に気づいた瞬間、膝から崩れ落ちます。

4/29/2026, 11:24:26 AM