158.『もしも未来を見れるなら』『何もいらない』『雫』
突然だが、もしも未来が見れるなら、アナタは何が知りたいだろうか……?
宝くじの番号?
期末テストの解答?
それとも、未来の自分が成功しているかどうか?
人によっては、『HUNTER×HUNTER』の連載が再開しているかどうかが死活問題かもしれない。
知りたいことは人それぞれだろうが、私にも知りたい事がある。
そして私が知りたい事は少々特殊だ。
私が知りたい事、それは……
――『今まさに私が描いている漫画の続き』だ!
『いったい何を言ってるんだ?』という冷ややかな目線は想定内だ。
けれども私にとっては切実な問題。
知ることが出来れば『他に何もいらない』と言い切れるほど、重要なことなのだ。
こう思うのには訳がある。
実は私、マイナー漫画雑誌に連載を持っているプロの漫画家だ。
そこそこ人気があり、ありがたいことに五年ほど連載を続けさせてもらっている。
それなりの長期連載だが、だからこそ問題がある。
それが『漫画の続きをどうするか?』問題……
長期連載の宿命か、ネタが枯渇し始めてきた。
これは漫画家にとって、文字通り死活問題である。
ネタがないということは、漫画を描けないという事。
原稿料が貰えず生活は困窮し、空いた枠を他の新人に奪われる。
漫画業界は、生き馬の目を抜く非情な世界なのだ。
そうならないためにも、私は漫画を描き続ける必要がある。
けれど悲しいかな。
今現在、次の展開が何も思いつかない。
真っ白なままの原稿を見て、私はふとこう思った。
『未来の自分が書いた完成原稿を、今の私がパクれたなら……』
もちろん盗作はご法度。
それだけで漫画家生命が終わってしまうほど、あってはならない行為である。
だが、相手が『未来の自分』ならどうだろう?
誰も困らない、完璧な解決策である。
もっとも、未来視なんてただの夢物語だ。
あり得ないからこそ、そんな妄想で、現実逃避するのだが……
――そのはずだったのだが、私は偶然、その方法を発見した。
ネタ探しに祖父の家の倉庫に漁っていた際、その秘法が記された古文書を見つけたのだ。
なんでも深い山々のそのまた奥に、ひっそりと佇む祠があるらしい。
そこでお供え物をしてお祈りすれば、未来が見れるという。
私は歓喜した。
これで人生最大の悩みが解決する。
私はその場で小躍りした。
早速現在の地図と照らし合わすと、なんというご都合主義か、この家の庭にあることが判明した。
さすが、おじいちゃんの家だ。
駅から車で二時間の立地は伊達じゃない!
すぐさま庭に飛び出して、祠の前で膝をつく。
良さげなお供え物が無かったので、自著の単行本を置いた。
こういうのは心が大事なのだ。
そんな言い訳をしていると、脳裏にポワポワとヴィジョンが浮かんできた。
そのヴィジョンの中で、私は来月号の雑誌をパラパラと捲っている。
(このまま見れば、どこかで私の漫画が出てくるはずだ)
そう期待して集中する――が、いっこうに自作が出てこない。
おかしい。
さらに集中して誌面を追うが、どこにも私の漫画が載っていない。
やがて、雑誌の最後まで読み切り、一度も私の漫画が出てこないまま映像が終わった。
「……今のはどういうことだ?」
他の連載陣を見る限り、未来であることは間違いない。
なのに、私の漫画だけ載ってないのはどういうことだ?
困惑しながら家に戻ると、担当編集者からスマホにメッセージが届いてた
嫌な予感がしながらスマホを開く。
その内容を見て、私の額から一筋の冷や汗が、雫のように流れ落ちた。
「やべ、締め切り忘れてた……」
P.S.
この物語はフィクションですが、自分で設定した短編の締め切りをド忘れし、遊び惚けていた阿呆はここにいます。
そして、自動車免許の更新締め切りを忘れていたのも自分です。
これを読んでいる皆様におかれましては、阿呆な自分を他山の石とし、締め切りを守るようにしてください。
でないと、締め切りをぶっちぎった事に気づいた瞬間、膝から崩れ落ちます。
4/29/2026, 11:24:26 AM