イカロスの墜落。美しい海と、のどかな街の風景のはしにまさに今、溺れ死のうとしている人間を見つけた。秋の夕日をなめらかに照らしだす水面には、逞しいイカロスの脚が突き出ている。ゆうゆうと浮かぶ船の帆は、はち切れんばかりに膨らみ、小舟は大きく傾いていて、その落下の衝撃を物語っている。しかし、誰ひとり、その異変に気がついていない。過ぎゆく日常の片隅に、イカロスはただ落ちた。無情で無関心。彼の翼を焼いた太陽だけが、沈むイカロスを見つめている。
6/19/2023, 8:55:36 AM