【君は今】
君は今、どうしているのだろうか。
回らない頭で、あの子の行く末を願う。
出会って数時間だけど、とある共通点が私たちを強い信頼で結び付けてくれた。
それは、【殺人鬼の被害者】。
残酷な方法で殺されるために、私とあの子は誘拐された。
アーティストと名乗るイカれた狂人、奴と同じ空間にいるのはごめんだ。
どうせこのまま死を待つならと、あの子と共に脱出を試みた。
あと少しというタイミングで奴が帰ってきてしまったけれど、あの子だけでも逃がせて満足している。
「可哀想に。大人しくしてくれたら、もう少しだけ生を楽しめたのにな」
注目はこちらに向いている。
あの子はきっと大丈夫。
警察か親に助けを求められるはずだ。
まぁ、間に合うかわからないけれど。
「さぁ、素敵な悲鳴をあげてくれ」
奴がナタを振り下ろす。
やめてくれ。
このままだと死が訪れる。
奴に。
「なんだその姿は……」
その目に映っているのは私。
ヒトの姿とかけ離れたバケモノ。
あの子を逃がせなかったら、この姿になれなかった。
素敵な悲鳴をあげるのは、私ではない。
すぐに噛み砕いたから、これ以上は聞けないけれど。
あとは、警察が来る前に元の姿に戻るだけ。
「おねーさん、ぶじ?」
下の階から、幼い声が聞こえる。
君は今、どうしているの?
どこまで逃げているの?
まさが戻ってきてないよね?
目の前の扉のドアノブが、大きな音を立てて回った。
2/27/2026, 5:40:47 AM