環七沿い

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ブロードウェイで君の買い物に付き合わされた
帰り、お決まりのソフトクリーム屋に行った。

僕は定番のチョコとバニラのダブル、
君はトリプルミックス。

チョコとバニラとオレンジのトリプルの
見た目がバカみたいで、ちょっと笑って
しまった。

そしたら君が「なんで笑うのよー?」って、
肩でぶつかってきた。

その拍子に、君のトリプルが無情にも丸ごと
こぼれ落ちた。

「え、まだ食べてないのに…」

初めて君のあんなに悲しそうな声を聞いた。

灼けたアスファルトの上で液状化していく
トリプルはちょっとグロテスクだったけど、
君はそれを見つめて固まってた。

「俺の、やるよ」

さすがに可哀想だったし。

「え、いいの?!」

あ、そんなに喜ぶんだ…

君は僕の食べかけのダブルを嬉しそうに食べてた。

「ホントはオレンジが美味しんだけどなぁ」

知らないよ。自分が悪いんだろ。

1982年8月、14歳の僕は、
真夏の陽射しと初めての間接キスに
クラクラしていた。


『こぼれたアイスクリーム』

8/11/2025, 12:26:50 PM