俺は生まれながらにヒーローという宿命を背負っていた
力が強かった、期待をされていた
その力は皆の為に正義のために平和の為に
そう教えられてきた
遊ぼうという友人Aの無邪気な笑顔を犠牲に俺は沢山の人の命を救った
知能なんて言葉とは程遠い、ただ訳も分からず暴れる怪獣は勿論
世界に絶望し闇堕ちした『ヒーロー』達を殺すのは正直嫌だった
俺も何度も向こう側に行こうと思った
奴等を倒す度に壊れる建物や失われる命
いつしかヒーローという存在は忌み嫌われるようになっていた
でもAだけは違った。俺を励まし労い応援してくれた
だから俺は頑張れていた
だがもう限界だ
奴等は今夜間違った世の中を正しに行く
真の敵「政府」のやつらを抹殺しに行く
きっと街にはおびただしい数の死体が転がるだろう
もしかするとこの世界の生き物全て
明日には消え失せているかも知れない
俺には止められない、止める気も無い
もっとAと遊びたかった
例え世界が滅ぼうとも「今日も幸せだった」
そう笑って死にたかった
さよならA、お前は俺のヒーローだ
俺は『ヒーロー』の遺書を握り締めた
もう笑わない冷たくなった彼の頬に涙が落ちた
ヒーローだから、力が強いから
心のどこかできっとそう思っていた……馬鹿だった
俺も戦うべきだった、例え無駄に散るのだとしても
自分の幸せは、自分の平和は、自分で掴むべきだった
俺もすぐそっちへ行くよ
もし次があるなら、それが許されるなら、俺にも戦わせてくれ
そしてその向こうで腹を抱えて笑い合おう
俺は『ヒーロー』の胸に刺さったナイフを抜き
自分の胸にあてがった
そして俺はもう忘れ去られた『ヒーロー』の本当の名前を呟いた
「……──」
Title¦後悔
5/15/2022, 11:22:08 AM