織川ゑトウ

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『不穏讃歌(ふおんさんか)』

パッとつく灯り、僕はそれを見て吐き気がしたんだ。

眠れない夜に毎日頼る青白い安定剤。
温もりを感じないこの毛布にまたうずくまる。
音がして、声が聞こえて、
また、また、また、
動けなくなる。

ただ、生きていたいとか早く死にたいとか。
そういうわけじゃないんだよ。そろそろ分かってよ。

薄暗くなる箱の中、ただ一つ思う。

「僕は誰だ」

皆みたいに努力もしてなくて、したところで分かってもらえなくて。
あの子みたいになりたくて。でも、なれなくて。

「あの子は強いわ」
「あの子は賢いな」
「あの子は偉いね」

じゃあ僕はなんなの。

増え続ける、僕らの目に見えぬ薄汚れた殺虫剤。
ふりかけられて、家に逃げても逃げ場がないよ。

なんでこうなったのとよく言われます。
なんでこうしたのと僕は聞き返します。

ただ、普通に愛されたくて。
ただ、普通に勉強もして。
ただ、普通に好きなことやって。

自由に生きたかったんです。

自由とはそんなにダメなことなの?
聞いても、知らんぷりして。

ただ、明日の光が恋しいです。

何もなくても生きてていいだろ。
あんたらの為に生きてるわけじゃねぇんだよ。
不穏な人生だっていいじゃねぇか。
あんたらにとっちゃ邪魔物でもな、こっちにとっちゃ神より上の存在なんだわ。
自分らは。生きてるだけで偉いじゃねぇ。生きてるだけで凄いじゃねぇ。
生きてることを褒めんじゃねぇ。そんなに必死に生きるくらいだったら、
自分は死ぬわ。死んだつもりで毎日過ごしてんだよ。


お題『朝日の温もり』
※青白い安定剤=スマホ
※箱=部屋
※殺虫剤=陰口


6/9/2023, 1:08:50 PM