NoName

Open App

No.43:『bye bye…』

「卒業式終わっても、感動とかしないタイプなんだよね」

ユウは卒業証書が入った筒を外階段の手すりにがんがんぶつけた。
そうだろうな、とは思った。
学校をサボり続けたユウの嗅覚は伊達じゃない。ギリギリの単位を狙って授業に出なかった奴は、他にも何人かいたのだと言い当てた。

「みんなハルんとこ来て、暇つぶししてた子ばっかじゃん」
「あいつらなー。この前よく振ったコーラ貰って、泡まみれになったわ」

仏頂面だったユウが途端に笑い出す。
別に泣かなかったことが悪いとは思わない。
てか、何が正解とかないんじゃね?
俺は刷毛をペンキに浸して、壁の絵の仕上げにとりかかった。

「この黒猫って何を見上げてんの?人?空?」

ユウが黒猫の目線を追って、隣のビルの窓を凝視する。
俺の落書きをちゃんと見てんのは、コイツだけだ。
この絵が完成したら、ユウも俺も街を出る。
他人になるんだ。お互いに。

3/22/2025, 5:31:16 PM