せつか

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誘われて、手を取って、舞台の中央へ。
自惚れて、浮かれて、有頂天になって、優雅にターンした時は夢みたいだと思っていた。
気が付けば貴方は私の手を離して、他の誰かと、華やかで綺麗なヒロインと踊ってる。

私はいつの間にか舞台の端で、くるくるくるくる。
誰も見ていないのにピルエットをやっている。
やがて踊り疲れて膝をつけば、ガクンと床が大きく割れて、私はあわれ奈落の底へ。

真っ暗な闇の中、私は四角い光を見上げる。
痛くて、苦しくて、声が出ない。――でも。
後悔なんかしていない。
私ほど貴方の為に踊らされた者はいないだろう。
私ほど貴方を引き立たせた者はいないだろう。
モブが一人消えたところで、舞台は終わらない。
拍手喝采、カーテンコール。
公演は大成功、貴方はこれからも光の中を歩くのだろう。

あぁ、不粋な足音が聞こえる。怒号に罵声、響くサイレン。足音が近付いてくる。滲んだ視界に貴方が見える。
「××××!!」
貴方が初めて私の名を呼ぶ。

――モブの終わり方にしては、ドラマチックな方じゃない?


END


「踊りませんか?」

10/4/2024, 2:49:52 PM