月下の胡蝶

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お題《私の日記帳》


朝カーテンを開けて。


ベランダの植物に水をやって。


それからキッチンに降りて、紅茶を淹れて、パイを焼く。


グラスと皿を磨いてから、愛猫のサーラにごはん。


焼けるまでの間――文庫本を読みながら、熱々の紅茶で、頭を目覚めさせる。


今焼いているのはシュガーバターのアップルパイ。



オーブンから香る匂いに胸をときめかせながら、私は彼を待つ。



もうすぐ帰ってくるのだ、王立天文台から。



今日はゆっくり、朝を過ごそう。



彼の好きなものをいっぱい作って、今日は朝からりんご祭りだ。カゴいっぱいのりんごを見つめながら、夢想する。




――パイが焼けたことを知らせる音。読みかけの文庫本を片手に、私は慌てて席を立つ。




開かれたハーブ色の手帳には、彼の好きな料理レシピをたくさんしたためて。




8/26/2022, 11:39:51 AM