Theme:秋風
暦の上では夏はとうに終わり、涼しいと感じる日も増えてきた。
まだ気温の上下は大きいけれど、風は秋風と呼ぶのに相応しい冷たいものになってきた。
前日が暖かかったので油断した。
空は晴れ渡っているが、秋風が木の葉を巻き上げながら通りすぎていく。
腕に直に当たる風は身体の芯まで冷やしていくようだった。
早足で自宅に向かう途中、公園の日陰に真っ赤な彼岸花が咲いているのを見つけた。
何故だろうか。私は彼岸花を見ると恐怖に似た気持ちを抱く。
彼岸花。別名、死人花。
「彼岸」という言葉もどことなく死を連想させる。
私は赤い花から目を逸らすと、逃げるように公園から離れた。
焦燥感に似た気持ちが私の目を眩ませた。
気がつくと、私の身体は宙を舞っていた。車と衝突したと気がついたのは、道路に倒れてからだった。
寒い。
この寒さは秋風のせいなのだろうか。それとも、私の中の温かい血液が流れ出しているからだろうか。
ふと、秋風が青紫の花を揺らしているのに気がついた。竜胆の花だ。
まるで倒れた私を見て笑っているかのように、風に揺られている。
そういえば、竜胆の花言葉には「苦しむあなたは美しい」なんて怖いものもあったっけ。
そんなことを考えている内に、私の目の前は真っ暗になってしまった。
11/14/2023, 11:58:17 AM