【瞳をとじて】
愛していたわ。
世界で一番可愛い私の娘。
それが自慢だった。
それなのに。
いつからかしら?
あなたが大きくなるにつれて
美しくなるにつれて
私の見た目も心も醜く変貌していくのは。
前は私もそれなりに美しく周りには何時も男性が犇(ひし)めいていた。
それが今では誰一人私の周りには近寄りすらしない。
あの人でさえも。
皆がお前をもてはやし、我のモノにしようと犇めき合った。
私はそれが羨ましかったのかもしれない。
愛情はいつしか憎しみにも似たものに変わった。
そして。
「さぁ、お食べ」
私はあの娘の大好きだった林檎を差し出した。
あの娘は怪訝な表情を浮かべるもとても純粋で人を疑うことを知らない、受け取ってしまえばそれは花が舞うように愛らしい表情へと変わった。
「ありがとう」
「どういたしまして」
それから娘はその林檎よりも真っ赤な唇を開き林檎にかじりついた。
途端。娘はその場に倒れ込んだ。
「ふふふっ」
これでやっと私はこれから解放される。
もう憎むことも悩まされることもないのだ。
だげど、どうして。
「っ、」
こんなにも涙が止まらないのだろう。
「私の可愛い白雪姫」
1/24/2025, 7:52:31 AM