この場所で
石の階段を上った先にある小高い一軒家の窓辺
尾道特有の山肌に張り付くような家並みを下に吹き上げてくる海風に体を預けている
川のように狭い海を隔た向こう側
小さな島が見える
ピコン〜依頼主からのメッセージが入った
---部屋のものはご自由にお使いください
1年間よろしくお願いします---
私はもともとこの町の住人
ただ依頼主の対岸の島育ち
都会に憧れ故郷を離れ転々としている身
30を過ぎても居場所が見つけられないでいる
久しぶりの帰郷だ
10代の頃、島育ちは本州側の町民から見下ろされていると勝手に思い込んでいた
それが嫌で島を離れた
ところが最近になって尾道を舞台にした映画のシーンを繰り返し夢に見るのだ
私は高台の部屋にいて
尾道特有の山肌に張り付くような家並みを見下ろしながら吹き上げてくる海風に髪なびかせつぶやいている「どこか遠くへ行きたいな」って
そんな時この依頼を目にした
〜1年間住んでくださる人を募集します〜
東京の住所のまま応募したらすんなりと任された 今日からは私が見下ろす側の人になる
この場所で一年過ごしたら島のあの場所は転々とした都会はどう見えるんだろう
腑に落ちる何かを掴みたいこの場所で
2/12/2026, 2:21:56 AM