【どうしても…】
1人の幼い患者が緊急で運ばれてくる。
かなり切羽詰まっている様子だ。
近くには母親らしき人がいた。
「患者到着。CPA継続、胸骨圧迫下でETCO₂ 12mmHg、低灌流。
FAST(超音波)施行、腹腔内出血なし!広範囲外傷なし、血圧触知不可!外科コンサルト要請!」
「CT可能?」
「搬送困難です!治療優先。大量輸血プロトコル発動、rTPA適応検討。開胸マッサージ準備!」
「お願いです……私の一人息子なんです…!!
お願いなので助けてください…!!!この子が居なきゃ私……」
「ご家族の方ですか?、ここから先は手術室になりますので、こちらでお待ちください」
「はい……」
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「開胸開始。心拍触知なし。直視下心臓マッサージ実施。心嚢穿刺適応?」
「心嚢液貯留なし。輸血継続、ノルアドレナリン追加」
「蘇生5分経過、ROSCなし。エコー評価で心臓収縮なし、終了決定」
「蘇生処置終了、患者死亡確認。看護師、移動準備を」
「はい!担架に移乗します。
ゆっくりいきますね。せーの」
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手術室から出てきたが、未だに忙しなく急ぐ医師達
「あ、あの!」
声をかけようとしたが、届かない
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「心電図フラットライン継続。心拍触知不可。瞳孔散大、光反射なし」
「全身評価完了。蘇生困難」
「最終確認、呼吸・心拍ゼロ。瞳孔固定。死亡時刻記録」
「死亡時刻は2025年5月19日 21時17分。報告書記録、家族へ」
「了解しました」
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そしてようやく家族の元へ報告が伝わる。
もう、彼の夜が明けることはないのだと
「どうしても………駄目なんですか…?
息子は……ついさっきまで元気でいたはずなのにぃ………っ!!」
ここで助かることが出来たら、奇跡としか言いようがないだろう。
しかし、奇跡なのだから、それが起こることなどほぼありえない…
「残念ながら………お別れの時間をお取りしますので、ゆっくりしてください。」
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元気だと思っても、小さなことで大事になります。
私も12歳で別れた友人がいるので、その突然の死の辛さはよく分かります。
本当に突然なんですよ。
だから、生きてることが当たり前だと思わないでください。
些細な事にいち早く気づける人になって下さい。
5/19/2025, 12:42:28 PM