27(ツナ)

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優しさだけで、きっと

俺は冷たくなった母の手を握る。
「優しさだけで、きっと。きっとどんな人も優しさだけで変われるから。だから、あなたもいつまでも優しい人でいてね。」
母の甘い考えに俺は苛立っていた。

人間なんてのはそう簡単に変わらない。
母は犯罪者の更正を行う保護司をしていた。
「悪いことをした人が、反省して悔やんで、正しい道に戻るのを傍で支える事が私の生きがいなの。この世に根っこから悪い人なんていないんだから。」
母は嬉しそうによく言っていた。
俺は反吐が出るほどそのセリフが嫌いだった。
"根っこから悪い人なんていない"
そんな訳ないじゃないか。根っこからの悪人だから母さんの優しさに付け込まれて、殺されたんじゃないか?

「優しさだけで、きっと?…なんにも変わらなかったじゃないか。悪人は生まれながらに悪人なんだよ。…返せよ。母さんを、返せよ。」
俺はどこにもぶつけられない怒りを込めて冷たくなった母の手を震えながら力の限り握りしめた。

5/2/2026, 10:21:09 AM