(二次創作)(一年後)
敷地の半分は見渡す限りの広々とした牧草地で、何頭もの牛、羊、アルパカたちがのびのびと歩き回っている。特に牛は、コーヒー乳牛、フルーツ乳牛、イチゴ乳牛と色もカラフルで、絶対数も多く賑やかだ。他方、敷地のもう半分はそれはそれは立派な畑で、季節の作物に花、刈り取り用の牧草が生き生きと育っていた。動物小屋も鶏小屋も、何なら自宅さえ大きく立派な建物に増築済みで、自宅を出てすぐのところには様々な果樹が植わっている。さて道具箱を開けばすべてがミスリル鉱石で鍛えられた農具たちが詰まっていた。
「これをたった一年で成し遂げるって、我ながら恐ろしい才能ね……」
「全くだ」
牧場主クレアの呟きに、隣に立っていたブランドンは重々しく頷いた。
クレアがミネラルタウンの牧場にやってきて1年と少しが経った、2年目春の月7日。
この日、クレアはブランドンに牧場を案内していた。昨日挙式したばかりで、これから二人の生活が始まるので牧場のことを知ってもらうためだ。そうして一通り回って、今に至る。
「暇があれば俺に会いに来ていたような気がしたんだが……」
「落とすまではね」
クレアはけろりとしている。彼女のブランドンへのアタックは凄まじく、それこそ毎日どこにいてもブランドンを見つけては彼の好きそうなものを貢ぎ続けた。そして秋が始まって間もなく、ブランドンが彼女に完全に惚れたところで、その訪問がぱたりと止んだ。一過性の遊びだったんだろうか、と訝しんだブランドンに、ある日いきなりやってきたクレアは、青い羽根を差し出した。
「キミ、本当に俺のこと、好きなのか?」
「興味が無ければ結婚なんてしないわよ」
少なくともその言葉に嘘は無さそうだが、一般的な恋情があるかどうかはいまいち見抜けなかった。とはいえ、ブランドンは彼女に惚れてしまったし、一生を共にする約束は交わしたのだ、細かい点は目を瞑ることにする。極端な言動を時折見せるクレアが、刺激的かつ魅力的な女性であることは変わりがないのだ。
5/9/2024, 7:05:33 AM