いす

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等価であるのは難しい。プレゼントの話だ。交換しようということになっている。交換の約束をしなくてもおのずとそうなるが口約束もイベントの演出である。まぁそれはいいとしてより頭を悩ませることにはなる。
こちらの気持ちがいつも大きいような気がしている。
かつ重い。温度については不明。
天秤の片側に乗せるには躊躇われるほどだ。自覚がある。等価とは。今年の冬はさらに特別だ。君と私が決定的に失われ、私たちが徹底的に傷つき、泣き腫らしたあの日から一年経ったことになるので。君がどう思っているかは知らないが、交換しようと言い出したのは君なので少なからず思うことはあるのかも知れない。香水、時計、財布あたりがくるかもしれない。私がリーディングに入れてる新作のアクセサリーの記事を横目に見ていたかもしれない。目敏いので。
「なあ、決まったか?」
そんなことを思っていたら困ったような顔をしてこちらにやってきた。
「欲しいものがあるんだけどリクエストは可か?」
台無しである。自ら台無しにするのが得意な人ではある。でもこちらは等価であることに頭を悩ませていたので君の望みを叶えられるのならそれがいい。
「ペアの…その、ペアのリング、リングじゃなくてもいいんだけども、なんかそういう揃いの」
引き続き困った顔で言っている。おそらく私も同じような顔をしているのだろう。こうして心も表情も愛もなにもかも、均しく分け合うことを、あの日の私たちが見たら笑うかもしれない。

12/24/2023, 6:23:41 AM