エリィ

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俺は小学校の二年生の時に地元の学校に転入した。
 言葉の発音がおかしいということで、俺の周りにはいつも俺の発音を真似して笑う男子生徒が取り巻く。女子生徒は遠くで取り巻いてくすくす笑う。
 好きな子に罰ゲームで告白されて、笑いものになったこともあった。

 中学は親の一方的都合で、私立ではなく公立に通うことになった。当然小学校からの繰り上がってくる奴らが多い。
 俺の存在はたちまち広がり、いじめは激しくなった。
 今日は英語の教科書がバラバラになっていた。
 その前は国語である。
 カバンの中身ごと、溝に捨てられていたこともあった。何かがなくなるのはよくあることだ。
 俺の日本語の発音は相変わらずおかしいまま成長し、ずっと発音でからかわれた。

 帰り道にこづかれたり、カツアゲなども当たり前。随分と搾り取られていた。俺のすべての小遣いは奴らのために消えていったと言っていい。
 ただ、俺はスマホだけは死守した。持っていることすら悟られないように。そしてスマホすら持たされない貧乏人として、更に笑われることとなった。

 そのなかでも、俺は成績は上位をキープし続けていた。それが気に入らずいじめがさらにエスカレートしていったが、少なくとも成績を落とすことはできなかったし、しなかった。なぜなら俺には目標があったから。

 ある時、親に助けを求めたことがあった。親はその話を聞くと、怒りの形相を浮かべ、次に顔をしかめたあと、俺ににある提案をした。
その提案で励ましてくれただけで、俺は十分だった。

 そして、ついにスマホを見つけられ、溝に捨てられてしまった。奴らは下品な笑い声を上げて、証拠は消えたと安心しきった顔で去っていった。

……とまあ、ろくでもない学生生活を送ってきた。我ながらよく頑張ったと思いたい。
 ちなみにスマホはあと4台持っていて、動画や音声の証拠はバッチリ収めてあるので全く動揺はしなかったが。
 そんなことが中学の三年間続いた。

 卒業まで長かった。
 進路については一番信頼できる先生と、家庭教師にのみ話してある。
 海外でトップレベルの高校にいくことを。
 なぜなら俺は英語のほうがスムースに話せ帰国子女だ。
 社会勉強とやらで、日本での生活をおくらせた親には一時的に恨みもあったが、今となってはそこそこ許せるようになった。

 今までの日本での思い出したくない不愉快な生活など、思い出とやらで振り返ってしまうものなど、さくっと捨ててしまうことにする。
 俺は卒業アルバムを他の教科書と一緒にくくって、資源ごみに分類した。

 そして8年後。
 奴らが成人し、就職先が決まる頃。
 親の提案通り、すべての証拠とともに奴らの名を伏せて、何があったかをノンフィクションとして出版した。

 その後、ネットの正義感あふれる特定班が動き出したそうだ。
 奴らがどうなったか、俺をかばうこと一つしなかった同窓生がどうなるかなど、俺にはどうでもいいことだ。
 スッキリした俺は海外で有名大学院に入り研究に忙しい。そんな未来を掴み取るまで、頑張ったかいがあった。

お題:未来

6/18/2023, 7:09:50 AM