使い古したスニーカーが、夕日に照らされて薄明るい色をした砂利を蹴っていく。小中学生の通学路にもなっているこの道は、一面田んぼに囲まれている。今は僕しか歩いていない。暑くも寒くもない風が吹き、くしゃくしゃの蛾みたいな葉が道端の段差にひっかかり震えている。なでつけるびゅうびゅうという風の音と、少し先にある用水路からのぴちゃぴちゃという水の音しか耳に入ってこない。その妙な静けさに、何かが終わることを悟った。
春。
そう口にしたはずなのに、どんよりとしため息に聞こえた。君のことを思い出してしまった。春に出会って、春に居なくなった。もう、どうにも、どれぐらいか、考えたくない。君が消えてから、皮肉にも世界の美しさを知った。この世界の全ての美しさを君と肌で感じたかった。きっと、春が終わるのではなく、僕が終わるのだろう。僕が終わる前に、春と一緒に、消えたはずの君が来た。僕が終わっても、君は終わらない。この美しい世界に残って、あらゆる終わりと始まりを眺めるのだろう。もし世界が終わるなら、僕は君を待っている。僕は世界の終わりに君と、
6/7/2024, 2:46:58 PM