「ほんとうに、私でいいのですか?」
自信なさげに僕に上目遣いで聞いてくる君。
「当たり前でしょう?僕が貴方がいいのです」
そう返すと嬉しそうに頬を緩める。あぁ、本当に愛おしいな。そう心から思った。
「でも、私貴方に何ひとつも返せるものがないのです。いつも助けてもらってばかり」
自信がなくて、いつも下を向いている君は知らないんだろう。どれだけ世間から君が評価されているか。僕が苦労して君を手に入れたことを。
美しさも地位も名誉も器量もすべてを兼ね揃えている淑女と騒がれている彼女に僕は言う。
「いつも言っているでしょう?僕は君がそばにいなきゃ生きていけないのです。君が僕にやらなきゃいけないことは一つ、僕より先に死なないこと」
「でも……私は貴方に助けられてばかりは、嫌なのです」
潤んだ瞳に睨みつけられ気付いた。彼女は僕の助けになりたいと、自分が彼女から愛されていることを理解していなかった。
「…でも君は」
僕にもう、愛というものをくれたじゃないか。
そんな言葉を遮り彼女は口を開く。
「私は弱いです。でも、貴方のことが私だって大切なのです。貴方を好きになったあの日から、何よりも貴方はわたしのかけがえのない存在です」
まっすぐ僕の目を見て伝えてくれる彼女にやっぱり僕はときめいてしまう。彼女を弱いなんて思ったことはない。むしろ誰よりも強いだろう。
君は何があっても大切なものを守り抜くのだから。
「僕は君にもう、本当にたくさんの感情を教えてもらったんだよ。人の心がなかった僕に、愛という感情も嫉妬と言う感情も君がいなきゃ一生しれないままだったんだ」
「貴方が人の心を持っていないわけ無いでしょう」
「……っ」
あぁ…本当に心が歓喜で震えた。たった一言、そうやって君はまた僕の心を揺さぶる。そんな人が僕を愛してくれていること。
「ですから、言いたいことはそういうのではなくて、私と貴方二人で!守り支え合いたいのです。たとえ家族が増えても幸せにし合いたいのです」
たとえ彼女を選んだことを誰かに間違えだったと言われても、自身を持って僕は答えられる。僕が選んだこの道は、光り輝いているばかりではないけれど、それでも大切な人が大切にしてくれる道だったよ。
数十年後、僕らは笑い合っていった。今も昔も幸せに溢れていると。
#たとえ間違えだったとしても
4/22/2024, 11:22:36 PM