パーティ全滅勇者

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何気ないふり

賑やかな居酒屋に1人の女性がいた。
西野 愛。髪は艶やかな黒髪。色白な肌に舞うような桜色の唇。瞳は髪と同じ闇を映したような黒い瞳。20代半ばで仕事はアロマセラピストをしながら趣味程度でタロット占いをしている。
愛が占いを好きになったのは祖母の影響だった。いつもタロットを大事に見つめ、机には綺麗な天然石で溢れていた。
なんて綺麗なんだろう。愛は天界にも似たような神秘的な祖母の家が大好きだった。
それからというもの、愛は祖母の家を訪れる度タロットに触れたくさんの知識を祖母から受け取った。
愛のタロットはよく当たると巷で有名になった。

今日のお客さんはアロマセラピーをよく利用してくれている人だった。同世代のとても可愛らしい女性だ。女性は自分の恋愛運を占って欲しいとの事だった。
先日呑み会で会った男性が気になるらしく、どんな男性なのか自分と付き合えるのか気になった様だ。
タロットカードとオラクルカードを使って愛は占った。
カップのエースが正位置で出た。カップのエースは愛情の始まりを表している。気になる人と両想いになれる可能性があるということだ。

「「素敵だな」と感じる人が身近にいれば、思いやりのココロを持ちながら接するのがおすすめです。思いやりが相手に伝われば自然と繋がるように感じます。」
愛の言葉に女性は嬉しさを隠しきれない様子だった。それからは男性の心理的な特徴やこれからの助言をカードに聞き、占った。女性は結果に満足気に店をあとにした。

居酒屋で1人、愛は今日のことを思い出し最近自分には全く恋愛に無縁だったなと思い返した。

ふと目を先にやると1人の男性が愛を見つめていた。目が合った瞬間、男性は愛に微笑み会釈をした。愛は何気ないふりをして、会釈し返した。内心はとても焦り、脈は派手に打ち急いだ。
(こんなシチュエーションなれてない。)
愛は深呼吸をして平常心、平常心と心で呟いた。
“一目惚れ”
愛は初めて経験した。いつも相手を知ってからしか好きにならない、冒険なんて一切しない慎重な性格だったから。

彼とどうなりたいのか。彼はどんな気分で自分に会釈したのか。今すぐにでもタロットを広げて占いたいくらいだった

そんなことしなくても、帰り際に彼から連絡先を教えて欲しいと声をかけられるなんて、知る由もなかったから。

3/30/2024, 1:03:08 PM