よく胸に穴が空いたような喪失感、とは言うけれど。
大切な人が死んだ時、悲しくて空しくて、どこか寂しさを感じたりして。そんな風に思うのだと、そう思っていたのだけれど。
「どう、しよ……」
でも。
たくさん遊んでくれたおじいちゃんが死んだ時、
なんだか、全然そんな風に思えなかった。
だって、何故かは分からないけれど、胸は逆にいっぱいで、なにかが溢れてきそうなくらい張り詰めて、無くなったものなんて一欠片もないような、そんな感覚しか抱けない。これって、悲しくないってことなんだろうか。
ぼくはつめたい人なのかなっておじいちゃんのいる空を見上げた。
すっごく、すっごく悩んで悩んで。おばあちゃんに少しだけ、弱音を吐いた。
「あらまあ、そうなの。ふふ、透くんはおじいちゃんがいなくなって悲しいのね」
「違うよ。だって、ぼく……」
おばあちゃんがほろほろと笑った。
「あら、私はおじいさんが死んでせいせいしましたよ。あの人ったら『俺は死んだら天国にいく』ってずーっと、ずーっと言ってたのよ。厚かましいわよねぇ。でもきっと、おじいさんは天国にいるのよ。そういう人だもの」
「ええ?」
「ふふ、私を待っててくれるんですって」
そう言ったおばあちゃんはなんだか幸せそうで。
「みんな感じ方は違うもの。人それぞれよ」
つん、とぼくの鼻をつついたおばあちゃんはおじいちゃんのいる方を見て、眩しそうに目を細めた。
9/10/2024, 11:33:31 AM