たなか。

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【岐路】

岐路がなんだってんだ。関係ないじゃないか。結局変わっていくのも出ていくのも俺じゃない。俺じゃないやつらが勝手に変わって勝手に嫌気がさして悪口叩いて出ていくんだ。そんな村のことをばあちゃんは馬鹿みてぇだと大笑いした。そりゃ、そうだと思う。でも、それと同時に家のばあちゃんすげぇって思ったんだ。強くて優しくて料理が美味い。ばあちゃんってすげぇ。
「スイカが食べたいな。」
ある冬の時期からもう少し、もう少しだ、と。ばあちゃんが言うようになった。何がもう少しなの、と聞いても答えちゃくれない。今の季節は夏。うちわで仰ぎながらあちぃなって思ってたら急にばあちゃんが言い出した。
「仕方ないな。」
なんとなくだけど、ばあちゃんは今外に出しては行けない気がした。暑さで倒れてしまうとかそんなんじゃない。ただ、何となく。虫の知らせとでも言うのだろうか。いつも吠えてくる犬の家を素通りして坂道をダッシュで駆け上がる。このスイカが冷たいうちに、と。もう冷たくないかもしれない。それでも、できるだけ。できるだけ、早く。部屋に帰ると嫌に静かな部屋が俺を迎えてくる。変わっちゃいない、関係ない。岐路がなんだってんだ。人生の岐路ってなんだよ。今の生活が変わることなんて、ありえない。外にいる時に母さんから電話が来た。いつ付けたのか知らない体調管理の為の物に異変があったからばあちゃんの様子を見てくれって。我儘なんて聞かずにここにいればよかった。間に合え、そんな一心で駆け上がった。
「ただいま。」
スイカはまだ冷たかった。

6/8/2023, 10:32:06 AM