もう一歩だけ、前に出てください。
あなたの勇気を測定します。
この真の暗闇の中で、あなたが一歩踏み出す先には、奈落の底が待っているかもしれません。
凶暴なワニが口を開けてあなたを飲み込もうとしてるかも。
もしかしたら、犬の糞を踏んでしまうくらいで済むかもしれませんね。
さあ、どうなるのかはやってみないことには。
もう一歩だけ、前に出てください。
何?新手のサギ?
なんで俺、こんなとこにいるの?
えーと、夕飯にココイチでカレー食って店を出たとこまでは覚えてる。
それから…あれ?家に帰った記憶が無いな。
どこかで拉致られて、ここに連れて来られたってことか?
誰が?何のために?
誰が?何のために?なんて思っていることでしょうね。
先に言っときますが、その答えはありません。
とにかく、あなたの勇気を試したいのです。
さあ、もう一歩だけ、前に出てください。
そこでどうなるかは、踏み出してみなくちゃ分からない。
ワクワクするでしょ?
人生って、そんなもんですよ。
いや、こんな真っ暗闇の人生なんて嫌だけど…一寸先は闇、って状況じゃん。
ワクワクなんてしないよ。
でもまあ、動かないことにはこの状況から抜け出せないみたいだし、一歩、踏み出してみるか。
どうせ暗闇で、何があるのかも分からないんだし。
よっしゃ、こうなったら、一歩どころかジャンプしてやるよ。
俺の人生、でっかく飛躍するんじゃないか?
…そこは、ココイチの駐車場。
誰もいない。
特に何も…変わっていない。
「あっ」
足元を見ると、100円玉が転がっていた。
奈落の底でもなく、凶暴なワニでもなく、100円玉。
そりゃまあ、俺の人生、こんなもんだよな。
でも、犬の糞を踏んでしまうよりはマシか。
暗闇の向こうには、何があるか分からない。
そこに立ってみるしか、知る方法はない。
それが吉と出るか、凶と出るか。
もしくは、おみくじは答えをくれず、変哲のない日々が続くのかもしれない。
それでもきっとどこかで、勇気は試される。
それが人生だ。
さて、ココイチも美味かったし、帰るとしよう。
それにしても、あの声は誰だったんだろうな。
なんだか偉そうだったな。
そもそも、俺の勇気を測定してどうしようってんだ?
まあ、聞いても教えてくれないんだろうな。
いや…考えてないんだろうな、が正しいか。
行き当たりばったりだからな、あいつ。
8/26/2025, 2:23:00 AM