怪々夢

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この場所で

この場所で結婚して、あの場所で子供ができて、そこで転職する。

妻は結婚当初から、不満を隠さなかった。

「やだぁ、まだ遊んでいたかったのに、こんなしょぼくれた男と結婚だなんて、私の美貌なら男なんて、より取り見取りだったのに。」

私は妻の笑顔を見たことがない。

僕たちの間にはあっという間に子供ができた。
結婚した時貰ったご祝儀の1000ドルは子供の養育費で消えてしまった。

「私、子供の育て方なんか知らないわよ。」

「大丈夫。子供は放っておいても育つ。」

「そう?じゃあ、子育てはあんたに任せるわね。」

俺がエンジニアから役者に転職すると言った時、妻は怒り狂った。

「あなたね、私と息子を養って行けるの?いい年こいて夢なんか見てんじゃないわよ。」

「しょうがないだろ、俺の人生なんて運任せ、ルーレット任せなんだから。」

「お隣さんが羨ましいわ。医者で高収入で。私、次はああいう人と結婚するわ。」

つまらない女だ。何でこんな女と結婚しなければならなかったのか?
隣の家庭を見る。ミサ。君は医者と結婚して幸せかい。本当ならミサと結婚していたのは俺だったのに。
前世では俺とミサは結ばれていた。深く深く愛し合い。子供はいなかったけど幸せだった。
ミサと目があった。あの切ない表情。ミサも前世の記憶を覚えているのだ。そうだ、つい30分前の話だ。忘れる訳がない。前世でも、前前世でも、前前前世でも俺たちは夫婦だった。だけど、ピンが転がってミサと今の妻が入れ替わってしまった。俺はこの場所からミサの幸せを願うしかない。

何が人生ゲームだ。人生はゲームじゃない。

この場所で事業が成功し、あの場所で子供が成人し、そこでゴールを迎える。

2/11/2024, 3:18:54 PM