詩歌 凪

Open App

 胸の高鳴り

 ひとめぼれ。
 私の人生には、まだない経験だ。運命の人とやらに出会ったらひとめぼれするのが定石らしいけれど。あの主人公も、あのヒロインも、出会った瞬間ビビッときていたみたいだけれど。
 そんなのいらないのだ。だって、私の運命の邂逅と呼べるものとの出会いは平凡だった。或いは、私の手の中にあった。私の運命の出会いは私が作った軌跡に宿るのだから、出会いはきっと、特別じゃなくていい。
 運命かどうかは、私が決めるのだ。
 だから、幾許をいくつも積み重ねてきたこの胸の少しうるさい鼓動は、私が描いたあなたとの奇跡だ。

3/19/2024, 4:01:52 PM