作家志望の高校生

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「あー……お腹いっぱーい……」
1人がそう呟くと、皆同意するように頷いた。今日は、大学のサークルの1年でコテージを予約したのだ。
雪が降り始めない程度のこの時期に借りる客はあまり多くないらしく、予約のとき雑談混じりにそう言われた。俺達も、元々はこんな時期に泊まる予定ではなかったのだ。
元は、夏休みに訪れようと思っていた。しかし、想像以上に予定が合わず断念。そのままずるずると引きずり続け今に至るというわけだ。
「ね、せっかく来たんだし……アレ、やらない?」
いたずらっぽい笑顔でまた1人が言った。彼はいつも突拍子もないことを言うが、今回は皆にも伝わった。
「お、いいじゃん。俺賛成。」
男子しかいないようなサークルなので、当然のようにノリは軽い。そのままの勢いで、賛成多数となった。
「じゃあやりますか……キャンプファイヤー……!」
全員がやる気を出してその辺の枝を集めてきて、あっという間にこんもりとした山になった。誰かが拾ってきたススキに、煙草を吸う奴のライターを借りて火を点ける。小枝の山は、冬の空気で乾燥していたのかよく燃えた。
「ヤバい、テンション上がってきた。」
全員がうっすらそう思っている。さらに、中には全力ではしゃいでいる者もいる。
「俺天才かもしんない。」
「なに?」
「マシュマロあるわ。」
なんて神の一声により、焼きマシュマロ大会が実施された。張り切っていた奴が盛大に焦がして溶岩を錬成したり、普段大人しい奴がプロ級に上手かったりして中々盛り上がった。
「はー……」
疲れた。全員の意見が再び一致する。
暖かな火に当たっていると、なんだか眠たくなってきてしまう。ぱちぱちと心地よい音が鳴っているのもある。
「……眠気覚ましにコーヒー淹れてくるけど、要る?」
「いる〜……」
「俺も頼む。」
砂糖多めやら濃いめやら様々にオーダーを言われるが、全て無視して普通のブラックコーヒーを淹れる。トレーに砂糖は添えたのでいいだろう。
カフェインの力を借りた俺達の宴は、もうしばし続きそうだ。寒さで白む空気の中、赤々と燃える灯火の周りで、青い春が弾けた気がした。

テーマ:灯火を囲んで

11/8/2025, 7:16:03 AM