「午後三時。門前町。古民家カフェ。」
日中、毎正時に聞こえてくるのだと、あの人は言っていた。
三つ鳴らしたあとに、時刻と同数の鐘の音。
あの人の軌跡を辿る旅は、ここから始めることにした。
もう二度と会うことができない。
もっと、教わりたいことがあったのに。
この先もずっと、見守っていてほしかったのに。
それよりもなによりも、あの人自身もやりたかったこと、やり残したことがあったのに。
寺を中心に発展した町。
あの人が生まれ育った町の、路地裏を歩く。
古い建物を改修や改築したカフェや本屋、雑貨屋があちこちにある。
「リノベーションか……」
鐘の音が聞こえてきた。
午後三時。
目についたカフェに入り、ノートを開く。
あの人が残したもの。
それらはもしかしたら、あの人が俺に出した最後の課題なのかもしれない。
────鐘の音
8/6/2024, 5:47:39 AM