このトイレ以外何もない部屋に入れられてから、数ヶ月が経った。毎日何もすることがなく、死に近づいていくのはなんだか虚しい。
とはいえ、何もものがないと、何もできない。暇にならざるを得ない。この部屋には紙と筆さえないのだ。私が何をしたと言うのだ。
思いつきを紙に起こすことも叶わない。だから何も考えないで過ごすようになり、いよいよ生きていることさえ怪しく感じられてきた。
そのとき、床に音がした。その方を見ると、小石が転がっていた。向いの牢を見ると、目をぎらつかせた人がこちらを見ていた。殺される日も近いらしい、と私は目を瞑った。
おい、と怒号まで浴びせられる。
なんですか、と私は答えた。
「か、け、!」
「……なんですか?」
「それで、、かけ!」
私はその意図に気づいて、小石を持ち、壁に文字を削り始めた。
思いつく限りの言葉を綴り始めた。
物語は無の中でこそ作られる。
2/7/2024, 11:44:27 PM